景気報道に左右されず、現預金注視を武器とする


年度末を迎える会社も多いことでしょう。資金繰り表を活用して頂いている方にぜひ注目して頂きたいのは、期首に平成29年3月末から繰り越した現預金の残高総額(4月末の残高総額でも良い)と、期末平成303月の現預金の残高総額予測です。増えていますか?減っていますか?

皆さんがお察しの通り増えている事が本来あるべき姿です。その増え方が資産・負債(借入)の要因にかかわらず増えていることが重要なのです。事業の実態である営業利益(売上―原価―販売管理費)の段階でプラスを出すために使える資金(営業戦略資金)は現預金ありきです。

そして、月末繰越現預金残高は、月次総支払金額の平均を上回っている必要があります。平均としているのは、原価の支払いサイト、納税期の月、返済条件のバリエーションが各社とも様々ですから、平均値の月次支払総額が最低でも繰り越していけるようになっていなければ経営者は不安なはずです。

もし、その平均的月次支払総額を繰り越していない月が期中に出てくるようであれば、早急に経営の見直しをし、現預金確保の対応をすべきです。

今月の統計資料からビジネス現場で雑談として使える資料をピックアップしてみましょう。財務省の文書改ざん問題があるので、統計資料も疑ってしまいますが、統計資料を基に国の政策が決定して行く事実を考えれば、自分の考え方、行動をしっかり定めるためにも、見ておいて損はない資料だと思います。

まずはGDP速報値。2017年10-12期の速報値では、年率換算1.6%の上昇です。

今更ながらGDPというのは三面等価の原則から、統計で出される国内総生産(支出側)と生産と分配が同じ額になります。つまり、国内経済規模が1.6%拡大しているという事になります。

需要に対する生産もプラスで伸び、分配される金額も1.6%増えるという事になるはずです。私たち一企業・個人の分配が増えてくれていれば皆納得できる数値なのですが、そうはなっていないのが実感です。

注目は、内訳の中で民間住宅支出がマイナス2.6%になっているのはとても気になります。景気を判断する際の目安として先行指数として住宅着工件数がありますが、住宅の支出が減っている(売れていない、建てていない)のを同義だと考えると、景気が悪くなる事を示唆しているようで歓迎出来ない指数です。

自分がどう考え、行動するべきか、指数で相手(国)を知りながら戦略を練っていきましょう。

 

 

内閣府 2017(平成29)年1012月期四半期GDP速報(2次速報値)平成3038日より抜粋
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/gaiyou_top.html

国全体として景気が上向いている報道や統計資料が多い中、人口問題が労働力としてどうなっているのかを労働力調査でみてみましょう。

我が国の就業者は6,562万人。61カ月連続して増加しています。一方完全失業率者数は159万人。92か月連続の減少です。やはり景気が良いといえる指数です。

もう少し掘り下げてみてみると、従業員規模30~499人規模の従業員が28万人(1.4%)減少。年齢階級で45~54歳の完全失業率は減少していません。

中小企業はやはり厳しい状況にあるのではないかと推測できる指数です。中小企業が企業全体の99%以上を占めるのが日本です。この従業員規模の会社で従業員を増やせる環境にならないと、景気回復の実感が国内に広がることはないと思います。

ちなみに、GDP速報値にもあるように雇用者報酬は年率換算マイナス1.6%と下がっているのです。

総務省統計局 労働力調査(基本集計)平成3032日より抜粋
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html

変化が激しい世の中にあって、変化に対応出来ないままにいれば、淘汰されてしまう。という危機感が蔓延しているように思います。その中で供給側が危機感を背景に変化を加速させても、需要者側がそれについていけていないようにも感じます。GDP統計資料では民間支出が年率換算2%増加しているようですが、雇用者報酬がマイナス1.6%と下がっていることをクロスリードしてみると、貧富の格差が広がっているようにも推測できます。

 まずは、自社と自分の足元の強みと弱みを客観的に捉えて、環境に負けない経営を模索して行きましょう!現預金の増加に注視することは、そのための一つの武器になります。


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