見出しに惑わされない


私達の実感、肌感覚と政府の認識が違ってるんじゃないのかなあ…と思ったらちゃんと統計発表等を見て、自分で解釈していくと、明確になることが多くあります。

事業再生の現場経験を長く踏まえて来た実感から、資金繰り表を活用した経営が、持続的な経営に有効な経営となると確信しています。そこで、拙著『使える!資金繰り表の作り方』(旬報社)や弊社HP等から資金繰り表をダウンロードして取り組んで頂いている方を中心に、皆様と他に何か出来る事はないかと考え、私が普段からマクロ的に日本経済を捉えるために注視している経済指標のGDP速報値と人口統計を中心に情報共有していけば、お忙しい皆様のビジネス雑談の一助くらいにはなれるのではないかと思い、私なりに思う事と伴に月間メルマガとして配信しています。お手すきの読み物にでもして頂ければ幸甚です。

今月は16日に発表された2020年7-9月期GDP速報(1時速報値)を見ておきましょう。2020年コロナ禍で下がり続けたGDP成長率、実質GDP成長率は、実はコロナの影響がまだ顕在化していない昨年後半から景気の後退感があったのです。

緊急事態宣言で行動自粛となった最悪期の4-6月期には▲8.2%(1次速報値▲7.8%年率▲27.8%から下方修正されています)とあります。4半期ごとだから単純に年率換算だと▲32%以上となるのでしょう。

そして、今回『7-9月期は5.0%(年率21.4%)の成長率、四半期ぶりのプラス成長となった。』とあります。

報道、メディアでは『7-9月期のGDP成長率は年率21.4%』として多くの紙面や番組、ネット見出しで大きく取り上げました。

一瞬『おっ、このコロナ禍にあっても、景気が回復しているのか!?』と経済の回復に期待を持ってしまいます。期待をしないまでも、『あ~、すごもり需要もあったから、コロナ禍で全業種が悪いといっても、良いところは良いんだろうな~』とか、『GOTO~の発表が経済の押し上げに寄与したのかな~』とか考えてしまうかもしれません。

四半期GDP成長率は“前期比”です。2020年4-6月期とくらべてということです。つまり、下がったところを基準にして、大きく伸びたと言われても、皆が実感できるようなイメージを基準にして、景気が良くなってます。とはならないのです。

でも、年率21.4%の成長率四半期ぶりのプラスとなりました。なんていわれると勘違いしてしまっても無理もないです。

ちなみにこの表の基準、基準の“0”は基準年・参照年と暦年連鎖方式で計算された基準を“0”として示されていて、ある年度を基準にした固定年度方式ではなく、ちょっと難しい計算式で出された基準を基にしています。なぜそうしたのかというと、バイアスの解消のためとのことです。

まずは、前期比で成長率が発表されていることを抑えておけば、正しい見方をする。という意味では、良いのではないでしょうか。

2020年7-9月期GDP速報(1時速報値)内閣府経済総合研究所 国民経済計算部のポイント解説では、参考として、雇用者報酬の動向では“前年同期比”については、雇用者数、一人当たり賃金がともに減少に寄与した。とあります。

前年同期 2019年7-9月期速報(1時速報値)と共に掲載してみます。

私としては、統計値に修正があるとはわかっていても、繰り越された時に前年同期の数値が新たな年度の数値で変わってしまうのは、違和感があります。


2020年7~9月期四半期別GDP速報 (1次速報値)

Ⅰ.国内総生産(支出側)及び各需要項目

1.ポイント

[1]GDP成長率(季節調整済前期比)

2020年 7~ 9月期の実質GDP(国内総生産・ 2011暦年連鎖価格)の成長率は、5.0%(年率21.4%)となった。また、名目GDPの成長率は、5.2%(年率22.7%)となった。

[2]GDPの内外需別の寄与度

GDP成長率のうち、どの需要がGDPをどれだけ増加させたかを示す寄与度でみると、実質は国内需要(内需)が2.1%、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)が2.9%となった。また、名目は国内需要(内需)が2.7%、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)が2.6%となった。

2020年7~9月期四半期別GDP速報(1次速報値)令和2年11月16日(内閣府経済社会総合研究所 国民経済計算部)より抜粋


2019年7~9月期四半期別GDP速報(1次速報値)

Ⅰ.国内総生産(支出側)及び各需要項目

1.ポイント

[1]GDP成長率(季節調整済前期比)

2019年7~9月期の実質GDP(国内総生産・2011暦年連鎖価格)の成長率は、0.1%(年率0.2%)となった。また、名目GDPの成長率は、0.3%(年率1.2%)となった。

[2]GDPの内外需別の寄与度

GDP成長率のうち、どの需要がGDPをどれだけ増加させたかを示す寄与度でみると、実質は国内需要(内需)が0.2%、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)が▲0.2%となった。また、名目は国内需要(内需)が0.4%、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)が▲0.1%となった。

2019年7~9月期四半期別GDP速報(1次速報値)令和元年11月14日(内閣府経済社会総合研究所 国民経済計算部)より抜粋


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