景気報道に一喜一憂せず、自社に出来る事とは


皆様のビジネス雑談にお役に立てればと思い、GDPと人口統計の資料を中心とした資料と、役立ちそうな公的資料を共有して、メルマガではマクロ的な視点を情報共有しています。

メディアのニュース以外に、マクロ的な資料を読み解く時間は中々取りにくいと思います。そこで私の日々の活動の一部でも共有出来れば皆様の時間を費やすことなく、情報共有ができ、各人の個別の事業に活かせるヒントになればいいなと思っています。

今月は日々の会話でよくある『景気はどうなの?』と漠然とした話題に、公的資料から国がどう判断しているのかを読み解いていきましょう。そして、それを踏まえて自分はどう感じ、どう動く必要があるのかを一緒に考えていきましょう。

内閣府から毎月発表される資料として「景気動向指数」というものがあります。今年も半分が過ぎました。7月にだされた5月分速報の概要では、国としては『景気は改善を示しています』です。これは、景気拡張の可能性が高いという判断です。

ちなみに、景気動向指数では、GDP統計の1-3月期の年率マイナス0.6%の時期でもずっと『景気は改善を示しています』です。

原則判断基準の3ヶ月トレンドや前月差プラスを考慮して発表されているとはいえ、公的資料を多面的にクロス調査すると矛盾が感じられます。

ですから、単一資料だけで自分の認識としてしまうのは危険なことです。景気動向指数を毎月チェックして景気は改善しているから、今の事業を真面目に進めて行けば、景気が改善して、時間が解決してくれる。という判断に陥ってしまう可能性があります。経営陣のミスリードが誘発されてしまいます。

別資料も見て、実感と合わせて、感性で、今と今後を見極めて行動する事も必要です。

では、今月も併せて日銀の「短観2018年6月」を見てみましょう。

短観は対象企業が大、中、小企業の約1万社の回答から様々な視点で分析されている資料です。個人的におもしろいなと感じているのは、金融機関210社も対象に入っているところと、概要として断定的判断が出ずに、数値だけを示して判断を見る人に任せているところです。

 そして特徴的な事として、製造業と非製造業という大きな枠組みで捉えている事です。あなたの事業は2分割した時にどちらにセグメントされているでしょうか。モノを作っているから製造業、作っていないから非製造業という認識で大まかにはあっているとも言えますが、建設は非製造業に入っていますから勘違いされがちです。

 短観によれば、業況判断の推移は製造業も非製造業も2008年のリーマンショック以降ずっと業況は改善して《良い》と判断する企業が増え続けています。

 ですが、細かく見ていくと、非製造業の中小企業が一番顕著ですが、改善トレンドが停滞から悪化を示し始めている数値も出てきています。

そして更に注目して見る必要があるのは、分りにくいですが、表中に予測としてある2018年4月期以降。製造、非製造、企業の大中小問わず《悪い》の方向にトレンドが動いているように見えることです。

これはGDPの年率マイナスの時にもお伝えしましたが、このトレンドが示す事は、今日と同じやり方を明日もし続ければ結果は悪くなるという事です。

全体が下振れしてく傾向にあるときは、企業は先行して何か新しい事、変化に対応できる施策を自社に取り入れる必要があります。縮小均衡策や現状維持策は下振れに推進力を付ける事になりかねません。上を向くにはどうしたらいいのかという視点で考えていきましょう。

日銀短観(概要)-2018年6月― 177回 全国企業短期経済観測調査より抜粋

次に短観ならではの金融機関が調査対象に含まれての統計資料として、資金繰り判断と金融機関の貸出態度判断があります。

この2つの統計資料からは、《金融機関の貸出態度は緩く、企業は規模を問わず資金繰りは楽になっている》と読み取れます。

金融機関の貸出態度はともかく、資金繰り判断が楽になっているというのは、本業での悪化要因が全業種、全規模的に、多分にある中で疑問に感じるところではあります。

日銀短観(概要)-2018年6月― 177回 全国企業短期経済観測調査より抜粋

また、この他にも日銀短観には、国内での製商品・サービス需給判断や価格判断といった興味深い統計資料もあります。

これらの資料から読み解けるのは、需要に対して、まだ供給超過状態にあり、販売価格が上がらない。いわゆるデフレ状態が継続しているということです。また、さらに悪い要因として、デフレ状況が続いているにも関わらず、仕入価格は高止まりの傾向にあるということです。

こういう統計を多面的にクロス分析しながら自社の考え方、行動を考えていくと、メディアで報道される企業の経常利益過去最高、税収過去最高、雇用統計改善も過去最高、賃金上昇など景気の良い報道に困惑して、思考停止、行動停止に陥る事はないでしょう。

国内を販売先にする企業は、需要が伸び悩む中ですから、新たな需要を創出する為に、自社の商品に付加価値を見出すにはどうすべきか。を考える必要があります。

仕入原価が高止まっていて販売価格に転嫁しにくい状況なのですから、業務効率を改善して内部経費を削減するにはどうすべきか。を考える必要があります。

資金繰り表を作成しながら、経営戦略を立て、統計分析を共に行い、自社を強固な会社として日々を楽しく過ごしていきましょう!


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